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武藤
涙を飲み込む度に、武藤の心の中に穴ができる。黒い穴は徐々に繋がり、武藤の心に巣食っている。(ごくり)と今日も飲み込んだ幾つかの言葉と思いが穴に落ちていくのを眺める。この穴に何かが落ちる度に、武藤は心が死んでいくのを感じた。それでも悲しみを感じるのだから、心とは何なのだろう。
#学生戦争
#学生戦争
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武藤
泥濘に足を取られたように、ただ足下を見つめて動けずにいる。「動け」と言う他人の言葉に内心反吐が出る。作り笑いを浮かべた頰に絶望して、息を止めたように生きる事に心では踠いている。引きずり上げる手は無いのだから、いつか力をため、諦めたように自ら足を引き抜かなければいけない。
#学生戦争
#学生戦争
武藤
優しい言葉や音が聞きたいと武藤は思った。頭上を飛び交う罵詈雑言の応酬に閉口し、目を伏せる。(帰りたい)身体の中にある、どこか柔らかい場所が傷ついていくのを感じる。耳を覆いたくなる言葉に、たまらず「失礼」と声をあげた。
#学生戦争
#学生戦争
大和と武藤
眠いのか面倒なのか、髪を乾かす事もなくタオルを首にかけた武藤に息を吐き、大和は武藤の腕を取った。「ん?」「ん、じゃねえよ風邪ひくぞ」あぐらをかいた足の間に腰を下ろさせ、タオルを手に取り頭の形をなぞるように拭う。身を任せる武藤の水に塗れた首筋に目をやり、大和はため息を吐いた。
#学生戦争
#学生戦争
大和と武藤
大和は仰向けに倒れる武藤の横顔を見た。白いその顔は、噂通り無傷のままである。叩き付けられた際に意識を失ったのだろう。痛みを身体と共に引きずりながら、その顔を覗き込む。死が目の前に広がる大地で、彼が生きている事の方が不思議だった。閉じられた瞼に、命への憧憬の口づけを落とした。
#学生戦争
#学生戦争
ロビンとバレッタ
夜が回る、星が回る。君が横にいる。指を絡めて、決して離さないように星に願う。もし完璧な世界があるならまさに今だろう。孤独な夜時間。おやすみと囁いて眠る、そんな幸福に流れ星がおちる。瞬いて、輝いて。他の誰にも叶えられない願いは、君といるこの完璧な世界。
#ホグワーツ化
#ホグワーツ化
大和と武藤
武藤を小突き、大和は子供たちを願いごと抱え上げ、笹の高い位置にとつけさせた。「願いは」尋ねた大和に苦笑して、武藤は「願う事が無い」と言った。今で十分と言うのが正直なところで、これ以上も以下も望みようがない。手にした短冊は書かないまま、武藤は三人の書いた短冊を見上げて笑った。
#学生戦争
#学生戦争
大和と武藤
顔は思い出せないんだ、背中しか知らないから、と武藤は言った。武藤の記憶にあるのは、父親の大きな背中と母の優しい手と子守唄だけだ。墓石も記録にもない父親とは如何なるものか、大和には分からない。だが、二人の子供の寝顔を眺めるその顔は、大和の知る限り、父としてのそれだった。
#学生戦争
#学生戦争
獅子崎と睦月
一にとって、有名音楽家の次男に生まれ幼い頃から苦労を知らずに生きてきた雹輔は、どこまでも神様に愛されている男であり、僅かに妬ましくもあった。グレーに染めた髪を立てるでもなく、本当にロックがやりたいのかと問いたくなるほど見た目は柔らかで美しい。ギターから奏でられる音色は破壊力には欠けるが丁寧であったし、まるで恋人か何かのようにギターを扱っていた。どこまでも、音楽に対しては真摯である。軽い気持ちで音楽を始めた一には、その真摯さは苛烈すぎた。
#Nothing is Sound
#Nothing is Sound
隆元と元春
「お前に何が分かる!」と、隆元が吼えた。元春は己の手が震えている事に気づいた。共に高校に通っていた頃の同級生とは異なり、目の前で大人の男が怒りを露にしている。「俺は、お前等とは違う…!」吐き捨てるように言い、馬に股がった隆元は二度と振り向く事はなかった。
#トライアングル
#トライアングル