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獅子崎と睦月
一にとって、有名音楽家の次男に生まれ幼い頃から苦労を知らずに生きてきた雹輔は、どこまでも神様に愛されている男であり、僅かに妬ましくもあった。グレーに染めた髪を立てるでもなく、本当にロックがやりたいのかと問いたくなるほど見た目は柔らかで美しい。ギターから奏でられる音色は破壊力には欠けるが丁寧であったし、まるで恋人か何かのようにギターを扱っていた。どこまでも、音楽に対しては真摯である。軽い気持ちで音楽を始めた一には、その真摯さは苛烈すぎた。
#Nothing is Sound
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隆元と元春
「お前に何が分かる!」と、隆元が吼えた。元春は己の手が震えている事に気づいた。共に高校に通っていた頃の同級生とは異なり、目の前で大人の男が怒りを露にしている。「俺は、お前等とは違う…!」吐き捨てるように言い、馬に股がった隆元は二度と振り向く事はなかった。
#トライアングル
武藤
「なぜあの子が死ななければならなかったの」と言った母親の言葉を受け止める。戦で息子を亡くした母として、その言葉は仕方の無い事であると武藤は思っている。やり場のない悲しみと怒りを、自分が受け止められるならばと思い、武藤は目を閉じて心が息を止める音を聞いた。
#学生戦争
旦那と妻
彼女は口紅ではなくリップを塗る。淡い桃色のそれを眺めながら、いつも彼女が薬指にとって添えるように下唇を撫でる手つきを思い出す。「使いたいの?」後ろからかけられた声に大袈裟に肩が跳ねた。「いや、違っ」ジッと見上げる妻を見つめて気づいた。(嗚呼、俺は彼女にキスしたかったんだ)
#うちよそ
大和と武藤
武藤という男は、泣くようにして笑う。幸福を信じきれない男の笑顔はどこか悲しげだ。一度思い切り泣けば良いのだと大和などは思う。一種の身を守る術なのだろう。不幸に対して無防備で、幸福に対して臆病な生き物に、大和はジッと手を差し出して待つ事に決めた。
#学生戦争
大和と武藤
言葉は偽れる。身体を重ねる行為さえ、男にとっては好いた惚れたの感情を必要とはしない生き物である。だから、永遠を誓うよりも、ただ側にいようと決めたのだと大和は武藤に言った。「お前は俺が側にいるの嫌じゃないだろ」確信したように言った男に、武藤は負けを認めるしかなかった。
#学生戦争
大和と武藤
海には似つかわしくない白い肌が、海上の太陽に照らされている。目を惹くその容姿に、最初は興味を持った。「アレは内部向けだ。武藤という名と、あの男の経歴がそれを許す」と上官は言った。国内にある本軍への対策にいるのだという男は、自身の役割を理解した顔で、戦艦の奥で眠っている。
#学生戦争
大和と武藤
ただ唇を合わせるだけだと言えば、それまでだ。しかしこの男とのそれには想いが込められている、と武藤は思う。口づけを交わすその瞬間が、武藤はどうにも苦手だ。吐息を飲み込まれそうで、思わず息を止める。その瞬間を待っていたように触れた唇に、(魂を吸われそうだ)と武藤は思った。
#学生戦争
大和と武藤
男同士である事を差し引いても、この季節に手など繋ぎたくない。滲む汗と互いの熱が混じる感触に眉を寄せ、武藤は手に力を込めた。武藤を横目で見た大和はその表情に薄く笑って、指を絡め、その途端もがいた指に今度は声を出して笑った。離せとは言わない強情さと離したくない欲が、愛しい。
#学生戦争
大和と武藤と双子
「行かないで、いやだ」という寝言に、武藤はそっと子供たちを見た。戦場で出会った二人に、ただ「帰るぞ」と手を引いた大和は、今はその腕を枕にされて寝ている。思わず苦笑し、穏やかとは言い難い夏の日差しを遮るように座ると、武藤は「ここにいる」と二人の頭をそっと撫でた。
#学生戦争
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