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大和と武藤と茜
「こういうのは形も大事なのよ」と茜は言った。広げられた紙には受理されない婚姻届の文字が印字されている。「お兄様はすぐ別にいいんだって言うけど、良くないの」夫となる者の欄に既に書かれた丁寧な『大和』の文字に苦笑する。ペンを持った武藤は、しかし「俺が妻なのか?」と手を止めた。
#学生戦争
#学生戦争
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大和と武藤
出逢えたことを奇跡とは呼ばず、大和は運命と言った。必然でも偶然でもない。武藤と出逢わなかった人生の道について、大和が考える事はない。出逢ったこの道が、武藤と生きると決めたこの道こそが、大和の人生なのだ。
#学生戦争
#学生戦争
大和と武藤
熱が身の内を穿つのを、武藤は血の上った頭で感じた。燃えるように頰と尾骶が熱く、一方で晒された肌の表面は冷えていくようだった。頭蓋と腹の内側をかき混ぜられる感覚に、武藤は口内の柔らかい肉を食んで目を閉じる。(熱い)名を、呼ぼうとした声は、二人の熱に溶けて飛散した。
#学生戦争
#学生戦争
武藤
静かな夜の帳の中で、武藤はそっと目を閉じて熱に手を伸ばした。思い出すのは、あの暗闇だ。動物は、痛みより快楽を記憶するらしい。(こんな事は間違ってる)頭では理解していても、手の動きは止められない。唇を食んで、溢れ出た熱に息を吐いた。急速に冷える脳が、闇が、堕ちた武藤を嘲笑う。
#学生戦争
#学生戦争
ロリポップとコップ
「帰ってたの」とコップはまるで朝以来のような顔で言った。家の鍵を置いたコップは、恐らく今日がロリポップの出所日だと知っていて、この家を片付け、ここに帰宅したに違いない。数年ぶりの恋人との再会に甘さを求めない彼女の、見えない行動に愛らしさが募りロリポップは手を伸ばした。ベットに膝を乗り上げ、見下ろした男の顔を両手で包む。女性のようなその美しい顔立ちに、コップは不機嫌に眉を寄せた。「何よ」オネエ口調で笑う男の瞳は、しかし雄の目つきでコップを見上げている。コップは咥え煙草を灰皿に押し付け、息を吹きかけた。
#Mad quintet
#Mad quintet
大和と武藤
武藤は「あるべき姿」と言うものを求めている。杓子定規な事が多いのはそれが理由かと気づいてから、この男にとってこの世は生き辛くて堪らないだろう、と大和は思った。ままならないことしか無い世で、武藤は理想論を掲げている。その姿が、大和にとっては時に嫌悪を抱かせた。一方で、武藤にとって生きやすい場所を与えたい、とも思う。肩の力を抜いても良いと思える場所(ホーム)を、武藤は恐らく知らない。小綺麗な聖人君子のような男より、わがままで頑固な武藤の方がよほど愛したくなると大和は思う。だからこそ、武藤の張り切った何かを解してやりたかった。
#学生戦争
#学生戦争
武藤
涙を飲み込む度に、武藤の心の中に穴ができる。黒い穴は徐々に繋がり、武藤の心に巣食っている。(ごくり)と今日も飲み込んだ幾つかの言葉と思いが穴に落ちていくのを眺める。この穴に何かが落ちる度に、武藤は心が死んでいくのを感じた。それでも悲しみを感じるのだから、心とは何なのだろう。
#学生戦争
#学生戦争
武藤
泥濘に足を取られたように、ただ足下を見つめて動けずにいる。「動け」と言う他人の言葉に内心反吐が出る。作り笑いを浮かべた頰に絶望して、息を止めたように生きる事に心では踠いている。引きずり上げる手は無いのだから、いつか力をため、諦めたように自ら足を引き抜かなければいけない。
#学生戦争
#学生戦争
武藤
優しい言葉や音が聞きたいと武藤は思った。頭上を飛び交う罵詈雑言の応酬に閉口し、目を伏せる。(帰りたい)身体の中にある、どこか柔らかい場所が傷ついていくのを感じる。耳を覆いたくなる言葉に、たまらず「失礼」と声をあげた。
#学生戦争
#学生戦争
創作
現代の薬屋を営む薬師寺さんは漢方を処方しながら来たお客さんの夢の中に入って問題を解決してあげる。薬師寺さんの弟子の赤鬼と青鬼、アルバイトの姫島くんの話。